企業のDX推進に伴い、請求書や契約書などの帳票業務の電子化は着実に進んでいます。一方で、取引先や業務内容によっては、依然として紙での運用が欠かせない場面も少なくありません。こうしたデジタルとアナログが混在する環境への対応は、多くの企業にとって現実的な課題になっています。
その課題解決を支援すべく、株式会社東計電算(以下、東計電算)と日鉄日立システムソリューションズ株式会社(以下、日鉄日立システムソリューションズ。インタビュイーの名前部分のみNHS)は、東計電算のBPOサービスと、日鉄日立システムソリューションズの電子契約クラウドサービス「DocYou(ドックユー)」、電子帳票基盤システム「Paples(パピレス)」を連携した「ハイブリッド帳票ソリューション」を提供しています。
電子と紙をどう使い分け、どうつなぐのか。両社の協業が生まれた背景、連携の具体的な仕組み、お客様にもたらすメリット、そして今後の展望について、両社担当者にお話を伺いました。
(左から)
株式会社東計電算
・BPO事業本部 パートナービジネス営業部 部長 中島 利彦 様
・BPO事業本部 パートナービジネス営業部 トランスポート課 課長 齋藤 厚史 様
日鉄日立システムソリューションズ株式会社
・産業流通ソリューション事業部 シニアマネジャー 川野 直孝
・営業統括本部 ソリューション営業第一部 シニアマネジャー 神山 俊輔
まずは、東計電算様の事業の全体像から教えてください。
東計電算・中島様:当社は独立系のSIerとして、製造業、小売業、不動産業など、業種別に特化したさまざまなソリューションを製販一体で提供しています。その中で私たちの部署は、ソリューション開発というよりも主にBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)であらゆる企業を支援する専門集団として、データエントリーから企業のシステム運用代行、IT人員の派遣まで幅広いサポートを行なっています。
部内にはEDI(※1)(電子データ交換)の部隊、プリントソリューションの部隊、そしてBPOとしてお客様業務を代行する部隊の3つがあり、私は部署全体を統括しています。同席している齋藤は、EDI部隊の責任者として現場を見ています。
※1 「Electronic Data Interchange」の略称。企業間の注文書や請求書などの取引データを、専用回線やインターネットを介して標準化された形式で自動的に交換する仕組み
では今回の協業の背景にある課題から整理させてください。近年、企業のDX推進によって帳票業務の電子化は加速していますが、現場の実態としてはどうでしょうか。
東計電算・中島様:BPOを提供してきた立場から申し上げると、従来はプリント代行のニーズが非常に多くありました。請求書などを印刷して封入し、発送して届ける。まさに紙が必要な業務を支える仕事ですね。ただ最近は、DX推進の必要性が叫ばれる中で電子化の要望もかなり増えてきました。提供するサービスもアナログで完結するものではなく、電子化も踏まえた提案が求められるようになってきています。
NHS・川野:背景としては改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)の影響がかなり大きいと思います。2024年1月の改正で電子取引データの保存が義務化され、ある意味、無理やり電子化が進んだという側面もあります。ただ、突貫で電子化に対応した結果、業務効率化まで到達していないケースも多く、逆に手間が増えたというお客様もいます。ここから先は、本来のDXの目的である業務改革や業務効率化につなげることが重要です。
NHS・神山:自社で電子化を推進していくにあたって、保管や管理のルールを社内で徹底する必要がありますよね。しかし、どんなに教育してルールを浸透させようとしても、全員が同じレベルでできるとは限らず、結局属人化してしまうケースも少なくありません。そこで周辺業務も含めてアウトソーシングで一括して任せたい、というニーズも高まっていると感じています。
さらに慢性的な人手不足の問題もあります。BPOに任せることで人手不足をカバーする企業と、社内だけで完結できるよう人材を育てていく企業、その二分化が進んでいくのではないかと見ています。
NHS・川野:コストセンターに人員を割かない方針の場合、少ない人数で業務効率を高めないと仕事が回らないので、電子化はもちろん、BPOの役割もますます重要になりますよね。
一方で、いくら電子化が進んでも、すべてが紙から電子に置き換わるわけではありません。たとえば、商品や資材などの「モノ」と一緒に動く紙。送り状だけでなく、検品作業に必要な納品書など、どうしても紙が必要になる場面はあります。
東計電算・中島様:あと、これはあくまで私の実感としてですが、やっぱり紙が手元にあると安心する。画面で見るのと、手に取るのとでは気持ちが違う。これは人間としてそういう感覚があるんじゃないとも思ったりもしますが、「どうしても紙をやめられない」という人はいると思うんですよね。
NHS・神山:ずっと紙でやってきたから、紙のほうが安心、という気持ちも確かにありますよね。
東計電算・中島様:クレジットカードの請求書って、郵送されてくると安心するんですよね。支払いの実感が持てるというか。あれに近い感覚なのかなと。なので、もちろん紙は減ってはいきつつも、ゼロにはならない。お客様の課題解決を目指す私たちとしては、電子と紙、両方のニーズに応えられるソリューションを提案していくことが欠かせません。
NHS・神山:まさに、そういったデジタルとアナログの双方にある課題を解決するために、今回は東計電算様のBPOサービスと、当社のDocYou/Paplesが連携し、「ハイブリッド帳票ソリューション」を開発したということですよね。私たちがDocYouやPaplesで帳票の電子化を担い、東計電算様が郵送代行を含む周辺業務を支える。電子化の加速と紙の運用が同時に進む今の時代にマッチしたソリューションだと感じています。
では次に、今回の協業について。東計電算様が電子取引対応を検討し始めた経緯と、日鉄日立システムソリューションズを知ったきっかけを教えていただけますか。
東計電算・齋藤様:私の部署はEDI、つまり取引先間のデータ連携を担い、得意先と取引先の間をつなぐ役割があります。しかし、EDIを進めようとしても本番着手までなかなか動かないケースがありました。お客様に原因をお聞きすると、契約書や見積書などの書類のやりとりなど、私たちが関与できない領域において、双方のやりとりがアナログで、時間がかかっていることが分かりました。そこで、両社のやりとりもBPOでサポートできないかという発想に辿り着いたのです。
当社は開発部隊の人材が豊富で、電子化の仕組み自体も持っているので、最初は自社開発も考えました。しかし、契約書や見積書といった帳票の電子商取引の機能が自社にはなかった。これを一からつくるとなると、時間もお金もかかります。それなら外部のプロの力をお借りしよう、と。電子商取引などのキーワードで調べる中で「DocYou」と「Paples」の存在を知ったという流れです。
さまざまな選択肢がある中で、DocYou /Paplesに決めた理由はどこにありましたか。
東計電算・齋藤様:選択肢はたしかにありましたが、「DocYou」と「Paples」の説明を読んでいて、「これなら私たちのやりたいことが実現できる」と当初から感じていましたね。なにより、当社は業界特化型のソリューションが多いのですが、この2つは業界を問わない汎用型のソリューションで、カバー範囲が非常に広い点が魅力でした。電帳法に必要な帳簿データ保存もできますし、スキャナ保存にも対応し、電子取引にも使える。さまざまなインターフェースで取り込めるので、基幹やホスト、ERPなど、既存環境が異なるお客様にもつなぎやすいんです。また、CSV連携で帳票を作れたり、デザイン機能が充実していたりする点も決め手となりました。
NHS・神山:今回のお声掛けは、当社にとってもお客様の課題解決につながるチャンスだと思いました。これまでPaplesは電帳法対応の基盤として、構築や帳票作成、運用支援まで行なってきました。ただその過程で、「郵送や紙の出力、そのほか周辺業務も一緒に支援してほしい」という声をいただくことがあり、そのたびに「当社では対応しておりませんが、対応いただける会社のご紹介はできます」とお断りせざるをえないということが少なくありませんでした。
ただ本来は、すでにご支援させていただいている私たちが、そのまま対応できた方が、お客様にとってもうれしいはずです。その課題意識をずっと持ち続けていて、近年さらにそのニーズの高まりを感じていたタイミングで中島様から連絡をいただいたので、とてもありがたかったです。
NHS・川野:本当にタイミングが良かったですね。実は他社との連携の可能性もゼロではなくて、複数のサービスを検討していました。しかし、対応しているデータ形式の幅などの懸念から、現実的な取り組みのすり合わせまで進んでいなかったのが実情です。
まさにそのタイミングで東計電算様のサービスに出会い、こちらが出力できる形式のデータを、間違いなく受け取っていただけることが分かり、DocYou/Paplesのいずれのサービスからでも連携できる点が決め手になりました。
NHS・神山:連携に際して両社で共通していた問いは、「顧客にとって最適な帳票運用とは何か」でした。私の思いとしては、アウトソーシングを求める企業様はやはり、周辺業務も含めてまるっと安心して業務を任せられることを求めているわけなので、それが実現できる状態をつくりたい。
お客様にデータさえ格納してもらえれば、あとは私たちがデータを受領・処理をして、必要な手続きにつなげる。その一連の流れのうち、オペレーションは東計電算様のBPOが、受け取る手段や保管の基盤はDocYou/Paplesが担うという仕組みです。
それによって、人の入れ替わり等による教育の負担や、そもそもの人手不足といった課題を背負い込まずに、企業成長を推進していただくことができます。そのように、お客様の利便性最大化に貢献することが、私たちの考える「最適な帳票運用」だと思っています。
NHS・川野:電帳法はもともと、「紙で保管していた帳簿や書類を電子で保存していいですよ」という特例法です。実は帳票データといっても、さまざまなカテゴリーがあり、帳簿書類、外部に出す請求書や注文書など多岐にわたります。これまで、電帳法に対応しているお客様の中にも、Aの帳票はこのシステムから、Bの帳票は別のシステムから、Cの帳票もまた別のシステムから、といったように、帳票の種類ごとに複数のツールを組み合わせて運用しているケースが多くありました。
しかし、そこはなるべく一つのプラットフォームで扱える環境が望ましい。Paplesは帳票基盤なので、さまざまなシステムから一つの基盤へのデータ集約、会計システムを通した帳簿データ保存から販売管理の請求書発行などが可能です。その上、電子対応希望ならDocYouが、郵送代行が必要なら東計電算様のBPOサービスが活用できます。このように一つのプラットフォームに統一することは、運用保守の面でも有効だと思います。
東計電算・齋藤様:BPO導入の際にお客様からよくご相談いただくのは、「運用方法が固まらない」というお悩みです。こうなったらいいという状態はなんとなく分かっているものの、それを実現するためのベターな仕組み化の方法が分からないということですね。属人化を避けてメンバーにアクションを分散させることを検討すると、考えるべき変数が増えてなおさら運用方法を考えるのが難しくなって検討が止まってしまう。
だから私たちは「このやり方でいきましょう」と型を決めることを大切にしています。従業員の皆様には、その型に合わせてデータを格納していただければ、あとは全部こちらで引き取って完遂させる。お客様側で細かい運用を完璧に固める必要なく、シンプルに課題解決につながる。それが、顧客にとって最適な帳票運用ではないかと思います。
今回のソリューションについて、その構成を詳しく教えてください。
NHS・神山:今回開発した「ハイブリッド帳票ソリューション」の構成には、大きく3パターンがあり、お客様のシステム構成や運用に合わせて、柔軟に提案できる形にしています。
まず1つ目が「上位システムで仕分け」するパターンです。基幹システム側で、電子で配信するものはDocYouに、紙で送るものは東計電算様に連携して対応する。帳票の行き先を上位側で振り分ける考え方ですね。基幹システムを軸に、電子配信と郵送代行を並走させます。
2つ目が「Paplesで仕分け」するパターン。いったんPaplesに帳票データを集約し、帳票作成・保管まで行う。その上で、電子配信対象はDocYouに連携し、郵送対象は東計電算様に連携して処理する。Paplesを“ハブ”として活用するやり方です。基幹システムにデータはあるけれど、帳票をイメージ化して電子的に送りたい、そして保管も含めて整理したいというお客様におすすめです。
3つ目が「DocYouで仕分け」するパターンです。Paplesがなくても、基幹システムからDocYouに連携して、DocYou側で「電子配信」と「紙の郵送」を振り分ける。もちろん、すでにPaplesを導入しているお客様ならPaplesも使えますし、Paplesがなくても基幹システムとDocYouだけでも成立します。
お客様の状況や運用方法に合わせてさまざまな仕分け方法をシステムとしてご用意し、さらに周辺業務まで含めてトータルでサポートする。それが、このサービスの強みだと思っています。システム構成だけでいえば他社さんでも不可能ではないかもしれませんが、「周辺業務も含めて、トータルで支援する」ところまで踏み込めるのは、簡単ではないはずです。
ちなみに東計電算様のBPO業務は、具体的にどこまで代行できるのでしょうか。
東計電算・中島様:お客様がやっているあらゆる作業を代行する、というのが基本で、印刷も当然その一部ですし、加えて、紙媒体のデータ化オプションも展開しています。
たとえば契約書。最近は電子契約が普及してきましたが、過去の契約書は紙で保管されている会社が多いですよね。それらの紙を私たちが電子化して、保存まで行うことができます。その保存先としてDocYouの仕組みを活用すれば、電帳法にも対応した形で保管できる。そうすれば必要なときにWebで閲覧できますし、紙を探し回ることがなくなり、保管場所もいらなくなります。実際、過去10年分の契約書の保管に、社員寮の1部屋を丸ごと使っているような会社もありました。見えにくいコストが、確実にかかっているんですよね。
東計電算・齋藤様:皆さんご存知のとおり、2020年以降テレワークの導入でオフィスを縮小した企業も少なくありませんでした。そこから現在はオフィス回帰の潮流も見られていて、「場所がない」ということで、移転が必要となってきます。そのタイミングで、個人の引っ越しと同じように「持って行くものを減らすために、例えば紙の書類などは整理したい」というニーズも増えていますね。
この協業によってお客様にどんなメリットを提供できるのか。業務効率化や、見えないコストの削減、本業への集中なども含めて、東計電算様の視点からどのようなメリットがあるとお考えでしょうか。
東計電算・齋藤様:まずはシンプルに、電帳法対応と紙帳票運用が混在する環境で、業務負荷を軽減できる点です。電子と紙が混ざると、運用が二重になりがちで、余計な工数がかかったり、作業が煩雑になったりします。そこを解決できるのは、お客様にとって分かりやすいメリットだと思います。
それに加えて、私たちが支援するのは基本的にノンコア業務です。そこをお任せいただくことで、従業員の方々には、お客様にしかできないコア業務にシフトしてもらえる。結果として、生産性を上げたり、収益を高めたりする余地が生まれると思っています。
東計電算・中島様:もう一つ大きいのが、お客様の取引先の要望に応じて、多様な配信形式にも柔軟に対応できることです。画面上でデータをダウンロードする、メール添付で送る、FAXで送る、郵送で送る。こうした選択肢を一つの運用の中で用意できるので、取引先のリテラシーに関係なくシステム化できるというメリットがあります。さらに、帳票管理を一元化できることで、内部統制の強化にもつながりますし、ペーパーレス化を進める上でも重要な一歩になります。
NHS・川野:直近でいうと、電帳法の「スキャナ保存」の領域です。紙で受け取った書類をスキャンして電子化していく流れですが、「過去分もまとめて対応してほしい」という相談が増えているので、そういった機能を拡充していきたいと考えています。
NHS・神山:加えて、まずは協業の取り組みを一巡、二巡させて、実績とユースケースをしっかり積み上げたいですよね。その中で、お客様との会話から「実はここまで対応できる」「こういう支援にもつなげられる」というヒントが、必ず出てくると思っています。
また、今は業種を選ばない、汎用性の高いソリューションとして提供していますが、成功パターンや業界特有の勘所など、ノウハウが溜まってくると、次は業種ごとに標準化した形にも展開できるはずです。結果として、あらゆる企業のバックオフィスDXを加速させるサービスプラットフォームにする。それが大きなビジョンです。
東計電算・齋藤様:弊社は業種特化の部門が17部門あります。もし業界標準の型が出来上がってきたら、それぞれの部門と連携して、その先のお客様へ展開することもできそうですよね。
東計電算・中島様:そう思います。まずは今、具体的に取り掛かっていることを確実にやる。ここが第一です。その上で地固めができてきたら、お客様の新しいニーズを引き出しながら、発展させていきたいですね。
それから、AI活用も検討したいです。当社は自前でクローズド型の生成AIを開発しています。将来的にAIとうまく連携できれば、もっと面白いことができるんじゃないかと思っています。そこはネクストチャレンジとして掲げていきたいですね。
NHS・神山:PaplesやDocYou自体も、バージョンアップで便利な機能が増えています。そうした進化も取り入れながら、より早いスピードで価値提供を広げていきたいと思っています。そして、東計電算様は独立系のSIerとしてとても柔軟に動ける企業だという認識ですし、われわれも気持ちとしては独立系に近く、柔軟に動きやすい事業体だと思っています。だからこそ、両社のシナジーをスピーディに高めながら、お客様の課題解決と価値創造につながるサービスを一緒につくり上げていきたいですね。
※ページ上の内容は2026年2月時点の情報です。