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【電子帳簿保存法2024年改正】紙保存が原則できない?電子保存の対応方法を解説

監修:日鉄日立システムソリューションズ株式会社
   DXソリューション事業本部 産業流通ソリューション事業部
   デジタルドキュメントソリューション部
   上級文書情報管理士・文書情報マネージャー 梅原 淳

2023年12月31日をもって電子帳簿保存法(略称:電帳法)の宥恕措置が終了し、2024年より電子帳簿保存法が全面的に施行されています。
以前は電子取引で送られてきたPDFの領収書を印刷して紙のまま保存していましたが、2024年からは原則として電子取引で受け取ったデータを電子保存する必要があります。

この記事では、令和5年(2023年)度の税制改正の概要、とりわけ電子取引における対応方法詳細に加えて、対象事業者や保存対象、関連する文書の種類、保存ルール、事務手続きの例などを、分かりやすく説明しています。
電子帳簿保存法の理解を深め、対応が求められる方々に役立つ情報を提供することを目的とした内容となっておりますので、関係者はこの機会にぜひご活用ください。

電子帳簿保存法の主な改正内容、電子取引の電子保存の義務化は2024年1月1日開始

国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf)令和3年5月 を参考にして作成

電子帳簿保存法は、その施行以降、複数回の改正が行われてきました。
特に注目すべきは、令和3年度改正で、電子帳簿保存制度を適用する際に税務署への事前申請が不要になった点です。
これにより、税務署への申請やみなし承認なしで国税関係帳簿・書類、スキャナ保存の電子保存を納税者の意思で実践できるようになりました。

更に、2024年1月施行の令和5年度税制改正によって、電子帳簿保存法に新たな変更が加えられました。この変更の詳細、保存形式に応じた変更点を見ていきます。

(1)電子取引データの保存改正

電子取引データの保存に関しては、検索要件が一部緩和され、宥恕措置の終了と新たな猶予措置が設けられました。

(2)検索要件緩和(新猶予措置)と対象者見直し

税務職員の求めによるデータのダウンロード要請に応えられる場合、かつ、下記の場合に限って免除されます。
対象者の基準も変更され、基準期間(原則2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者は検索要件が不要となりました(改正前は1,000万円以下)。
また、電子取引データを書面出力し取引年月日や取引先毎に整理した状態で税務職員に提示・提出できる場合も検索要件が免除されます。

(3)優良電子帳簿に関する改正

電子帳簿保存法に適合する帳簿には、所轄税務署宛ての届出により過少申告加算税が軽減される優遇措置が適用されます。2024年1月からは、この措置の対象となる帳簿の範囲が見直されました。

(4)スキャナ保存に関する改正

スキャナ保存の要件も変更され、解像度や階調の情報保存が不要になりました。また、書類の入力者情報の確認が不要になり、帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類に限定されました。

スキャナ保存要件の概要図(イメージ)

国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf)令和3年5月 を参考にして作成

これらの改正は、電子帳簿保存法の運用をより柔軟にし、事業者の負担軽減が目的であると考えられています。

電子取引における対応方法

(1)電子取引とは

電子取引とは、電子形式で行われる商取引のことを指し、取引に関連する文書を電子的に交換する授受を意味します。電子帳簿保存法では、法的に保存が求められるこれらの文書が電子形式で保存される場合の規則を設けており、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」と共に、保存方法の一つとして電子取引の保存方法が定められています。

電子取引には、EDI取引、インターネットを介した取引、メールでの取引情報の送受信や、添付ファイルの請求書、メール本文に含まれる取引情報、スクリーンショットやスマートフォンアプリを通じた決済などが含まれます。これらは通信手段に関わらず、電子的な形式での取引として法人税法施行規則などで定められた保存義務のある国税関係書類の全て電子取引が範疇に入ります。

ただし、紙の文書を社内の利用目的で電子化した場合は電子取引とはみなされず、電子取引は原則として関係会社間を含む外部との取引先と電子データをやり取りした情報に限定されます。

(2)電子帳簿保存法に関わる、電子取引とは

正確には「電子取引」とは、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書など、取引に必要な情報(取引情報)の送受信を電磁的手段にてやり取りすることです。ここで言う「取引情報」とは、これらの文書や、それに類するものを指します。

国税庁ホームページ 電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~ 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和6年6月)(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0024005-113_r603.pdf)を加工して作成

改正された電子帳簿保存法(略称:電帳法)旧第10条から、電子取引の取り扱いがどのように変化したかを説明します。
以前は、電子取引に関連するデータの保存について、所得税(源泉徴収所得税を除く)や法人税の対象となる者が電子取引を実施した際には、財務省令で指定された方法に従い、該当する電子取引の情報を含む電磁的記録を保管する必要があると規定されていました。
ただ、この規定では、財務省令に基づき電磁的記録から生成された書類の紙による出力と保存も許可されていました。

法改正により、改正後の第7条の但し書きが削除され、電子取引に関わる全てのデータを電子形式で保存することが必須とされました。
この変更は、多くの企業からの柔軟な適用を求める声もあり、2年間の「宥恕措置」が導入されました。これにより、2023年12月31日までの間は、従来通り電子取引データの紙媒体による保存が認められていました。
しかし、2024年からは、改正された電子帳簿保存法に従って、電子データのみの保存が求められるため、企業はその期限までに適切なデータ保存と必要に応じてシステムを整備する必要があります。

(3)電子取引のさらなる要件の緩和とその他の変更とは

基準期間の年間売上が5,000万円以下の小規模事業者に対しては、税務調査の際に税務職員によるダウンロードの求めに応じる体制が整っていれば、検索要件を満たす必要がなくなりました。この改正により、小規模な事業者は、より柔軟にデータ保存の義務を果たすことが可能となります。

【令和6年1月1日からの電子取引データ検索における猶予措置について】
電子取引データのダウンロードの求め(税務職員からのデータの提示・提出の要求)があった場合に求めに応じることができるようになっており、電子取引データをプリントアウトした書面を、日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている場合は、猶予措置の適応を受けることができます。

「DocYou(ドックユー)」は、日鉄日立システムソリューションズ株式会社(略称NHS)の統合電子帳票ソリューション「Paples(パピレス)」にてペーパーレス化・帳簿の電子化に取り組んできた結果を元に開発された、電子署名・タイムスタンプ・2要素認証などの機能を持つ電子取引・電子契約クラウドサービスです。専用のサーバーや利用者の電子署名の取得などが不要なため、低コストですぐにご利用いただけます。
「DocYou」導入により、コスト削減や業務効率化、コンプライアンスの強化、テレワーク/リモートワークの推進を実現します。

また、電子帳簿保存法への対応でも実績豊富なNHSの「Paples」とも連携し、契約文書だけでなく、請求書や注文書などの取引文書の送受信、一斉配信などにも活用できます

電子帳簿保存法の対象となる事業者は?

電子帳簿保存法が誰に適用されるかについて解説します。

(1)対象は広範囲にわたる

電子帳簿保存法の適用範囲は、売上高や規模に関係なく、法人税・所得税申告を必要とする全ての法人を含みます。これは、対象となる法人がこの法律の要件に注意を払う必要があることを意味します。

(2)法人及び個人事業主の義務

電子帳簿保存法は、原則として全ての収益を目的とする法人と個人事業主に適用されます。

2023年12月31日まで、紙の文書を保存することが許可されていますが、2024年からは電子形式での保存に切り替える必要があります。
このため、2023年内に電子帳簿保存法への適応を完了させることが重要です。

電子帳簿保存法 保存対象

電子帳簿等保存の帳簿・書類、スキャナ保存の対象書類、電子取引データ保存の対象書類についてご案内いたします。

(1)電子帳簿等保存制度

会計システムで作成した仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿や貸借対照表、損益計算書などの決算関係書類、販売管理ソフトで作成した請求書・見積書などの控えを一定の要件のもとに電子データのまま保存できる制度。

⇒ 一般的な会計システムがあればすぐに電子化が可能となる可能性がありますが、法人税法施行規則で定められた記録項目が網羅されているかを検証する必要があります。

(2)スキャナ保存制度

取引相手から受領した紙の請求書・領収書、もしくは自社が紙で作成した請求書・見積書などの写しを一定の要件のもとスキャンし、データを保存して紙の書類を廃棄できる制度。

⇒ 紙の書類をスキャンして電子化・ペーパーレス化を実現できます。

(3)電子取引保存制度

請求書や領収書などと同様の取引情報が記載された電子データを取引相手から受領または送付した場合、電子データのまま保存する必要がある制度。

⇒ 電子データでの保存が義務化されており、法人税・所得税申告を必要とするすべての企業で対応が必要があります。

改正におけるメリット・デメリット

企業の電子帳簿保存法対応導入のメリットとデメリットとは

電子帳簿保存法対応によるメリット
以下に、電子帳簿保存法を採用することで得られる主なメリット(利点)を挙げます。

(1)省スペース化の推進

法律で、企業は取引の記録を帳簿に記入し、その事業年度の確定申告書提出期限の翌日から原則7年間保存することが求められています。
書類は通常、ファイルやバインダーに綴じて保存され、長期間にわたって大量のスペースを占めることになります。これらの書類を電子化することで、物理的な保存スペースを削減できます。

(2)経理業務の効率化・可視化

多くの企業が事業年度ごとに帳簿書類を分けて保存していますが、特定の書類を探すのには時間と労力がかかります。電子データとしてこれらを保存しておくことで、検索機能を活用してすぐに必要な情報を見つけ出すことができ、生産性の向上に貢献したり、取引先からの問合せにもタイムリーに応対したりすることが可能となり、顧客満足度の向上にも繋がります。
また、電子化によりリモートアクセスが可能になり、オフィス外からでも帳簿書類にアクセスできるようになります。また、業務プロセスも電子化により可視化が可能となり、内部統制強化にもつなげることが可能となります。

(3)コストの削減

紙の帳簿を作成する際には、用紙やインク、保存用品の購入が必要です。電子データでの管理に切り替えることで、これらの備品費用は不要となり、さらに保存スペースの削減ができるため、コストを削減できます。

(4)環境への配慮

ペーパーレス化を進めることで、環境保護に貢献している、SDGs実現を目指す企業である、と示すことができ、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として表明できるようなります。

(5)セキュリティの強化・トレーサビリティの確保

物理的な帳簿書類は複写による情報漏洩・盗難や紛失のリスクがありますが、電子データ化して管理することで、セキュリティを強化し、データの安全性を高めることができます。
また、ひとたびインシデントが発生してしまった場合でも、アクセス履歴から、その影響範囲や発生原因の特定が行えるようになります。

電子帳簿保存法のデメリット
電子帳簿保存法を導入することで得られるメリットは多いものの、考慮すべき欠点も存在します

(1)システム導入の初期コスト

電子帳簿保存法対応を実現するためには、適切なコンピュータシステムの導入が重要であり、その場合は初期投資や維持費がかかります。

(2)適切なデータ管理の必要性

電子帳簿保存法に対応するためには、適切なデータ管理が必須であり、これには専門的な知識やスキルが求められます。

(3)システム障害のリスク

電子データによる保存は技術的な障害や物理的な障害によってアクセス不能になるリスクがあります。

(4)運用の複雑化

従来からやり取りしている書面と電子取引データの二重管理が必然的に必要となり、全社を巻き込んだ運用の複雑化が想定されます。
例えば取引先からの問合せ対応も、保存媒体の違いで、検索する対象が変わってくる煩わしさが発生することが懸念されます。

電子帳簿保存法に対応できないとどうなる?

電子帳簿保存法対応システムを採用しない選択は、紙ベースの取引記録と帳簿の保存を意味し、これには複数のデメリットが伴います。
主な問題点には経理業務の非効率化、文書の劣化や紛失リスク、および保存スペースの必要性が含まれます。
電子帳簿保存法に対応した電子システムを導入しないことによる非効率な状態は、帳簿管理や文書検索における時間と手間の増大を招きます。また、紙ベースでの取引では、郵送に伴う追加の手間と時間が必要になります。

電子帳簿保存法に適合しない場合、紙の損傷や紛失が含まれます。
加えて、紙の文書、特にレシートなどの感熱紙は経年劣化や外部からの損傷に対して脆弱であり、盗難や紛失のリスクを減らすためには追加のセキュリティ対策が必要になります。
物理的な文書の保存には大量のスペースが必要であり、特に本店所在地が地価の高い場所となっている企業は外部倉庫への保存委託費用を含めて、これは長期間にわたる大きな負担となります。

電子帳簿保存法違反の罰則には、青色申告承認の取り消し、重加算税10%加重の課税などの罰課金の付加、法人税上の損金不算入や消費税上の仕入税額控除否認などが含まれます。これらの罰則は、電子データの改ざんや不正使用、適切な記録保持の欠如に対して適用されます。
電子帳簿保存法の要件を満たすことで、これらのリスクを回避し、経理業務の効率化とデータの正確性向上を図ることができます。

電子帳簿保存法の対応には「Paples(パピレス)」&「DocYou(ドックユー)」

「Paples」は統合電子帳票基盤であり、企業内のさまざまな書類を一元的に電子化できるシステムです。
4区分のJIIMA認証を取得済で、社内のさまざまな国税関係帳簿・書類について、電子帳簿保存法に則った適切な保存・運用が可能です。
社内の書類について、ペーパーレス化したい、各種システムの帳票をもっと利活用したい、適法性も保ちたい、そういった要望に応える機能を多数備えています。

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※本記事は2024/7時点の情報です。