電子帳簿保存法への対応、業務効率化、人手不足への備え。帳票電子化の必要性は広く認識されつつありますが、紙を中心とした取引慣行が根強く残る建設・土木資材業界で実装を進めるには、現場運用と取引先調整を含む、粘り強い設計が欠かせません。
大嘉産業株式会社(以下、大嘉産業)は、基幹システム刷新を起点にこの課題へ正面から向き合い、日鉄日立システムソリューションズ株式会社(以下、日鉄日立システムソリューションズ。インタビュイーの名前部分のみNHS)の「Paples(パピレス)」「DocYou(ドックユー)」を軸に、段階的な電子帳票DXを推進してきました。
大嘉産業が描くDXの全体像と現在地、業界の変革を見据えた展望について、両社にインタビューしました。

左から
大嘉産業株式会社
経営管理本部 DX戦略部 米田 梨夏 様
同部 稲垣 拓武 様
仮設資材事業部 大阪支店 課長代理 岩本 眞由美 様
同部 部長 加藤 靖政 様
日鉄日立システムソリューションズ株式会社
営業統括本部 ソリューション営業部第一部 シニアマネジャー 神山 俊輔
産業流通ソリューション事業部 シニアマネジャー 神代 英樹
同部 シニアマネジャー 川野 直孝
建設・土木資材業に残る「紙」文化と業務負荷

まずは、大嘉産業様の事業の全体像から教えてください。
大嘉産業・加藤様:当社は建設・土木資材業界に属し、建設中の建物に使われる安全ネットや防音シートなど安全資材のレンタルと販売を行う仮設資材事業を主軸としています。そのほか、漁業従事者へ定置網や養殖かごなどを販売する海洋資材事業、また、土木工事向け資材・公園遊具・人工芝の販売やテント倉庫など膜材を活用した建築・特殊製品の提供を行う産業資材事業なども展開しています。
今回、推進中である帳票業務の改善について伺いたいと思っておりますが、建設・土木資材業界全体で見たときどのような課題があるのでしょうか。
大嘉産業・岩本様:大前提として、まだ紙ベースのやり取りが非常に多い業界です。さらに、弊社が扱う資材などは、会社という固定の場所に送るのではなく、基本的に現場ごとに納入・回収するケースが多いものです。そのため、請求書や納品書なども「現場単位」で送付する必要があり、それに伴って発送件数が膨大になります。結果として、帳票関連の手作業にかなりの時間を取られてしまう。この業務時間をどのように短縮できるかが業界全体で問われています。
また、どうしても紙の書類では紛失が発生するケースもあり、再発行依頼や「届いていない」という問い合わせへの対応も少なくありません。これがデータでの受け渡しになれば、受け手側の待ち時間を減らせますし、送付側の工数も大きく下げられるだろうと長らく考えていました。

NHS・川野:そこに加えて、大嘉産業様を含め当業界のサポートをさせていただくなかで私が強く感じたのは、取引先指定の請求書の多さです。フォーマットが指定された請求書を個別に作成する事に手間が掛かっていると感じましたが、これは業界特有の大きな課題ではないでしょうか。
大嘉産業・岩本様:当社も個別対応の請求書を毎月200~300件規模で作成していましたね。かなり手間が掛かっているのと、属人的な対応になっているのが現状だと認識しています。
大嘉産業・加藤様:大嘉産業としての課題で言うと、見積書や納品書に加えて「検収報告書」も運用しています。これは、レンタル資材が返却された際の状態確認を記録する帳票です。例えば、「溶接をした時の火花で穴が空いている」「塗料や接着剤が付着している」といったレンタル資材のダメージを確認し、補修作業費の追加請求を行うための証憑として使います。写真付きで整理して送付する必要があり、運用負荷が非常に高い業務でした。
しかも現場によっては、案件の最後に一括精算となる場合があります。そうなると、半年分~年単位に及ぶ検収写真や報告書を遡って探し出さなければならないケースもある。ここも大きな課題でした。
基幹システム刷新が呼び水に。電子帳票化への経営判断
今回のプロジェクトは、2024年に始まった基幹システム刷新の一環だったとうかがっています。まず、システム全体を変えようとした背景を教えてください。
大嘉産業・加藤様:もともと当社では、約10年前に導入した販売管理システムを使っていました。ただ、そのシステムは仮設資材事業部での導入を前提に設計されたもので、後から立ち上がった産業資材事業部の商流とはマッチしない部分が多かったのです。
また、会計システムは別のものを使用していたのですが、システム自体の老朽化も進み、販売管理と会計で別々のシステムを動かす構造にも限界が見えていました。そこで、ERPも含めた基幹システムの再設計が必要だという判断になりました。その際、単なるシステムの入れ替えにとどまらず、ペーパーレス化や生産性向上も含めたDX推進を見据え、その具体的な取り組みの一つとして立ち上がったのが今回のプロジェクトです。
そのような動きがあるなかで、日鉄日立システムソリューションズとの接点はどのように生まれたのでしょうか。
大嘉産業・加藤様:初期段階では、コンサルティング会社とともにRFPを作成し、ERPと販売管理システムの導入方針が決まり、帳票の電子化対応については他社の製品を組み合わせて構築することを計画していました。
しかし、当社の帳票のボリュームや電子帳簿保存法対応の要件を改めて具体的に精査していたところ、保管対象の帳票が非常に多く、しかも長期保管が前提になるため、設計次第ではピーク利用を基準としたコスト構造が固定化してしまうリスクが見えてきました。
さらに、将来的に保管対象が増える可能性や、データ移行の自由度も踏まえると、より現実的で拡張性のある選択肢が必要だと判断しました。そしてそれを叶えるサービスはないものかと模索していたなか日鉄日立システムソリューションズの存在にたどり着き、これはと思い相談したのが最初のきっかけです。
日鉄日立システムソリューションズとしては、最初にどのような提案をしましたか。
NHS・川野:お声掛けいただいた当初の要件は「配信」と「帳票設計」であり、配信は「DocYou」、帳票設計は「Paples」を「ツール」として使えると考えました。しかし、ご提案を進める中で、運用面でのご相談や電子帳簿保存法についてのお話が上がった事もあり、これらの対応方法への助言も必要と捉え、業務担当者の目線に沿ったご提案をしてきた経緯があります。ただし、単なる「デジタル化」ではなく「DocYou」と「Paples」を用いたDX推進をご提案できたのではないかと考えています。

大嘉産業・加藤様:導入の決め手となったのは、コスト、導入スピード、そして業務へのなじみやすさです。先ほど触れましたが、当社には取引先ごとの指定請求書フォーマットが多数あり、ERPの標準のものだけでは対応しきれない部分があります。フォントサイズやレイアウトを含め、実務に合わせて柔軟に調整できることは必須条件でした。
NHS・川野:加藤様には帳票設計ツールの使い勝手以外にもDocYouの最適な活用方法を早い段階で見いだしていただきました。元々は、帳票の「配信」ツールとしての適用を考えていたわけですが、仕入先からの書類の「受領」にDocYouを活用すれば書類の受け取りから電子保存までを一気通貫で実現し、電子帳簿保存法にも対応できる、という事で業務スコープを確定することができました。
大嘉産業・加藤様:配信側は、ERP・販売管理側の立ち上げと連動するため、どうしても準備期間が必要でした。一方で受領側は、DocYou環境を先に整えれば早期に着手できる。この「先に動かせるところから始める」という方針は、プロジェクト全体の推進力になりました。現場の方にもまずは受領で運用に慣れてもらい、次に配信へ展開する。そうした段階的な導入プロセスに対して柔軟にご対応いただけたことも、最終的な決め手になりました。
単なる効率化を超えて。電子帳票化がもたらす顧客体験・業界標準の刷新と経営的価値
このプロジェクトは、単なる業務効率化にとどまらない取り組みだと感じています。経営の視点で見たとき、電子帳票化への対応はどんな価値をもたらすのでしょうか。
大嘉産業・加藤様:もちろん、業務効率化という目的は前提としてあります。締め日後に集中する担当者の業務負荷の低減というのは大きな意味を持ちます。郵送費や紙のコスト削減はもとより、本質は「浮いた時間の使い方」にあります。単純作業を減らせれば、顧客への個別対応に集中できる。結果として顧客満足度が上がり、関係性の強化にもつながっていきます。この点が、おっしゃるとおり「業務効率化にとどまらない」部分に当たるかと思います。
当社は創業75年の会社ですが、成長の過程で事業部が段階的に増えてきました。もちろん今現在でも事業部間で密に連携はとっていますが、どうしても完全に足並みを揃えるというのは難しいものです。ただ昨今の世の中の変化のスピードに対応するためには、今以上に全社で統一した内部統制や法対応の基盤を整えることが、当社の経営管理本部として非常に重要だと考えています。なのでこの全社的なシステムの刷新と電子帳票対応は、コンプライアンスを強化し、対外的な信頼や企業イメージの向上、その土台を実務レベルで支える施策であり、大きな変革の契機になればいいと思っています。
こうした業務のDX化は中堅・中小企業こそ率先して進めるべきだと考えています。当社の取り組みを通じて、取引先の皆様のあいだでも「郵送が減って楽になった」「やり取りが早くなった」という実感や声が増えてくる。そうしたユースケースが増えれば、建設業界全体にも波及して、やがて新しい業界水準をつくっていくことができるはずです。
段階的な導入プロセスで現場の「慣れ」をつくる
ここからは、プロジェクトの進め方について伺います。始動から本稼働まで、どのようなプロセスで進めてきたのでしょうか。
大嘉産業・稲垣様:重視したのは、いきなり全体を切り替えないことでした。大きくは、仕入先との対応を、続いて得意先との対応を切り替えていく、つまり先ほど触れた「受領」から「発信」という順序です。当社は請求書関連のボリュームが非常に大きいため、まずは仕入先から受け取る請求書を対象に、DocYouを先行導入しました。受領業務でテスト運用を行い、従業員の習熟度や運用上の課題を確認したうえで、次の段階として受領した帳票をPaplesへ連携していく流れです。

DocYouのテスト運用開始から次のシステム切り替えまで、およそ2カ月の準備期間がありました。この間に指定請求書フォーマットの整備を進め、最終的に当社からの請求書発行へつなげる計画で進行しています。
日鉄日立システムソリューションズ側では、プロジェクト推進にあたって具体的にどのような支援を行ったのでしょうか。
NHS・神代:最初に着手したのは、帳票業務の実態把握です。大阪の仮設資材事業部、東京の産業資材事業部など、部署ごとに送信・受信の単位、受け取りルート、担当の分担などを確認し、現行の紙運用・メール運用をDocYouへ置き換えた場合の業務プロセスを整理しました。まずは「どう使うか」のイメージを関係者間ですり合わせることが重要でした。

並行して、取引先様にDocYouを利用いただくために必要な説明事項を整理し、説明会も実施しました。DocYouの仕組みやメリットを理解していただいたうえで、実際の取引先とのコミュニケーションは大嘉産業様主体で進めていただく。この役割分担でプロジェクトを着実に前進させていきました。
NHS・川野:私たちが一方的に運用を決めるのではなく、「何ができるか」「どの選択肢があるか」を示しながら、大嘉産業様側で最適な運用を設計していただくための支援を行いました。経理部門の方々にも早い段階で参加していただき、実務に即した形で意思決定できるようにしたことも、立ち上がりをスムーズにした要因だと思います。

NHS・神代:具体的なタイムラインとしては、大きく3段階に分けられます。まず2025年10月に、仕入先からの請求書受領をDocYouで開始しました。続いて2025年12月末に、基幹システムとの連携確認を行い、本格接続に向けた調整を進めています。そして2026年4月からは、得意先への電子配信フェーズに入ります。受領業務で蓄積した運用の知見を生かしながら、次の展開へつなげていく計画です。

大嘉産業・米田様:当社は12月締めのため、まずは第1クォーター終了までに全体運用を安定軌道に乗せることを目標にしています。1月から3月にかけては、現場の方々に新しいシステムに慣れてもらう期間としています。その間に、DocYouで受領した請求書・納品書を支払処理につなげ、さらにPaples側で電子帳票としての保管・運用ルールに適応していく流れを固めています。3月までにこの一連の流れを整備し、4月を目安に得意先様向けへの配信をスタートさせる予定です。
NHS・神山:先ほど弊社川野がお話ししたとおり、最初にご相談いただいた段階では、検収報告書・納品書・請求書を得意先へ届ける配信業務が主目的でした。ただ、対話を重ねるなかで、受領を先行して進めるやり方に切り替えたのが大きかったです。

配信業務は、基幹側で発行処理を行えば自動で送れる部分が多く、運用者がDocYouに触れる機会が相対的に少なくなります。一方、受領業務は「受け取る→確認する→処理する→戻す」という操作が日々発生するため、DocYouやPaplesの流れを実務のなかで体得しやすい。結果として、システム理解と運用習熟が早く進みます。そのうえで配信フェーズに移行すれば、操作面・運用面ともに負荷が下がり、立ち上がりもスムーズになる。加藤様の構想はまさにそこを突いていました。
先行導入部署とキーパーソンの見極め。先回りで状況を耕し、プロジェクト成功へ導く伴走
導入プロセスのなかで、印象的なポイントは何でしたか。
大嘉産業・加藤様:何よりも感じたのはシステム導入に対する温度差への対応ですね。当たり前ですが得意先様のなかでも、すでに電子対応が進んでいる先もあれば、これからのところもあります。会社ごとに想定や意図があるなかで、当社の都合で始めたことにどのようにご理解いただけるか、コミュニケーションも含めて考える必要がありました。
そして温度差については社内も同様で、部署ごとに反応は違いました。例えば、仮設資材事業部は取引量が大きく、帳票業務の負荷も重いので、「楽になるならすぐやりたい」と前のめりで協力してくれました。一方で、そこまで課題感を感じていない事業部もありますし、同じ部内でも商習慣が異なると、課題感や優先順位は変わります。だからこそ、全事業部に一律で全体感は説明しつつ、「負荷が大きいところ」、すなわち仮設資材事業部から着手をしました。ROIの観点でも、仮設資材事業部でやり取りをしている取引先の3~4割がペーパーレス化すれば初期投資の回収めどが立つという試算が出ていたので、その目標をメンバーで共有して、実現のための道筋の検討を進めました。
導入が難しい事業部や個人にはどのようなアプローチを行いましたか?
大嘉産業・加藤様:新しいシステムに抵抗感を抱く人がいるのは当然です。現実、今の業務が大きな問題なく回っているのだから変える必要があるのか?という方もいれば、自社の指定請求書を長年Excelで作り込んできた方もいて、皆さんそれぞれいわば「自分の型」を持っています。そうしたスタンスを一律で否定して全面的な移行を行うのは、現実的ではありません。
現状の運用も残しつつ、新システムを使用したフローを、次の担当者や新任の方、派遣スタッフの方、つまり初見の方でも回せるように標準化したルールを整えておく。そしてその会社・事業部の成長や代謝のなかでうまく浸透させていくことが大事であると考えています。中堅・中小企業では、上場企業のような厳密な業務マニュアル整備を一気に進めるのが難しい面もあるので、そこは段階的に進めていく予定です。

NHS・川野:帳票は日々の実務そのものなので、紙をなくすなら「では何で代替するのか」を具体的に示さないと現場は動きません。そのため私たちは、帳票システム単体の話に閉じず、必要に応じてワークフローとの連携や運用変更案まで含めて、提案段階から整理してお伝えしています。すでに電子帳票を使っているお客様なら機能差分の説明で済みますが、紙中心だった現場では業務そのものが変わるため、そこは特に丁寧に伴走しています。
NHS・神山:同時に私たちが意識しているのは、「ITを入れれば何でもすぐ楽になる」とは言わないことです。実際には制約もありますし、最初は負荷が上がる場面もあります。ただ、その先に業務標準化や属人化の解消があり、手順が明確になることで「担当者を守る仕組み」にもなる。そこをシンプルに伝えることが大切だと思っています。
もう一つ重要なのは、キーパーソンの見極めです。発言力・影響力があり、現場を動かせる人に初期段階からプロジェクトに入っていただく。大嘉産業様においては、それが岩本さんでした。仮設資材事業部を先行させるという経営判断とも一致し、推進力が一気に高まりました。
大嘉産業・加藤様:岩本は業務本部の立場で、仮設資材事業部の各営業所を束ねる司令塔の役割を担っています。だからこそ、自分の役割を理解したうえで、先回りして動いてくれました。
大嘉産業・岩本様:そうですね。仮設資材事業部がうまくいかなかったら、このプロジェクトは先には進めないと考えていました。しかも、お客様側と仕入先側を同時に切り替えると現場が混乱するので、まずは仕入先を年内に動かし切ることを目標に、できるだけ先回りして動くようにしていました。

NHS・川野:実は、仕入先様への展開に必要な準備を、岩本さんはかなり早い段階から進めてくださっていました。全社共有用に仕入先リストを整備し、他事業部の分まで含めて一覧化してくださっていた。これは本当に大きかったですね。
大嘉産業・岩本様:いずれ必要になるのは見えていたので、手が空くタイミングで先に作っていました。後でやると間に合わないと思っていたので。
NHS・川野:それを後から知って、すごく驚きました。感謝しかないです。
現在の手応えはいかがですか。
大嘉産業・岩本様:仕入先の皆様にはかなり協力していただけていて、受領側は軌道に乗せられてきたと感じています。次は、仕入側を安定させながら売上側へ展開していく段階です。売上側は拠点ごとの取引慣行などもあるので、各支店主導で進める必要があります。現場をフォローしつつ、事前アンケートだけでなく、その先の分類・導線設計まで丁寧にやっていく予定です。
NHS・神山:私たちも当初は、業界特性上どこまで賛同していただけるか不安がありました。ただ実際に進めるなかで、仮設資材領域に関しては6~7割の協力が見込める手応えが出てきています。これなら、目標としていたROIの実現可能性は十分ある。仮設資材事業部で成果を出し、それを他領域へ波及させるというストーリーが、現実味を帯びてきたと感じています。
大嘉産業・加藤様:切り替えについての温度感が想定よりも高くなっているのは、多くの人が私生活ですでに紙の請求書が減ってきていることを、意識的にも無意識的にも感じているからだと思います。だからこそ現場の事務担当者の皆さんも「毎月、紙を折って封入して発送する業務は本当に必要なのか?」という問いが生まれてくる。実際、当社が電子化を進めると、乗ってくださる取引先様は着実に出てきます。理屈だけでなく、社会や生活の変化に対する実感が溜まってきている。このタイミングで背中を押していくことができれば、「手間が減る」という価値は、業界や企業規模を超えて確実に伝わるものだと感じています。
「DX」の定義付けと、現実的かつ理想を追う構想を持つ
今後の展望を教えてください。
大嘉産業・加藤様:2026年1月1日付で、当社はDX戦略部を立ち上げました。このプロジェクト自体は情報システム部の枠組みで始まりましたが、システムは入れて終わりではありません。運用に伴う減価償却に対し、それ以上の成果を創出して投資を回収し、さらなる価値を生み出す責任があります。稟議の時点では「目的」や「期待する効果」を明確に書きますが、実務ではそこが十分に追い切れず、現場に効果が伝わらないままになることもある。そこを変えていくために、従来の「情報システム」という看板ではなく、あえて「DX戦略」という名前にしました。
「DX」という言葉はもはやありふれてしまいましたが、かなり曖昧な言葉で、これだけ聞いても結局何をするべきかが明確でない場合が多い。そこに関して、私たちがやるべきことは「ITを使った経営企画」そのものである、と定義付けしています。社内SEが「お助け役」でとどまるのではなく、自社業務を最も理解している立場として、業務と経営をつなぐ提案をしていく。そこまで踏み込んで初めて、導入したシステムが価値を生むと思っています。
具体的には、原価の適正化、BI(ビジネスインテリジェンス)による管理指標の統一、事業部ごとに異なる帳票・見方の標準化などです。ERPを入れた以上、管理会計の視点を現場にも浸透させ、部門長が限界利益を前提に判断できる状態をつくる必要があります。無駄なコストを抑え、利益体質を強化できれば、会社として還元できる余地も広がります。DXの本質は単なるコスト改善ではなく、社内での判断基準・言語の統一による経営の変革だと捉えています。
そのような前提のもと、本プロジェクトについても先を見据えています。当社はレンタル業が主軸なので、得意先・仕入先ごとに取引状況を見える化できるページが必要だと考えています。それは当社だけが見られるものではなく、取引先の企業の方々もログインが可能で、当月請求額、検収報告、継続中契約の状況まで確認できる。そのようなシステムの構築が理想ですね。
NHS・神山:いわば得意先様向けのポータルサイトのようなイメージですよね。私たちもその構想は伺っていまして、そのうえで、対応するサービスや仕組みごとに役割分担が重要だと思っています。
DocYouは帳票の授受・配信、Paplesは帳票運用という明確な役割がある。一方で、蓄積されたデータをどう活かすかは、別レイヤーの設計が必要です。SFA/CRMや分析基盤、さらにAI活用も含めて、連携の仕方次第で価値は大きく広がります。「何でもできる単一システム」をめざすより、役割の異なる仕組みをどうつないで、現場に反映させるか。その設計が、次の競争力につながると考えています。今後は、データ活用のやり方そのものもアップデートしながら、より少ない工数で、より高い価値を生み出すものを一緒に作っていきたいです。
NHS・神代:DocYouとPaplesだけで完結する領域、他サービスと連携した方が良い領域、その切り分けは確かにあります。当社には複数のソリューション部門がありますので、これまで築いた信頼関係を土台に、必要なタイミングで最適な提案を重ねていきたいですね。
大嘉産業・加藤様:日鉄日立システムソリューションズには、安定感と柔軟性の両方を感じており、安心して任せられるパートナーです。業界全体でDXが遅れているなか、大嘉産業として先駆けて標準化を進める。このチャレンジを、これからも一緒に前に進めてほしいと思っています。
※ページ上の内容は2026年2月時点の情報です。

社名:大嘉産業株式会社
事業内容:建設仮設資材の製造・販売・レンタル
低層住宅建設用仮設資材の販売
土木・防災繊維資材の設計・製造・販売
スポーツ人工芝の設計・施工・販売
漁業用資材の販売
建築物の企画・設計・製造・施工・管理
公園遊具のシステム設計・製造・施工・管理
創業:1949年1月
従業員数:393名(2025年1月現在)
URL:https://www.daika.co.jp/
まとめ
- 業界による紙中心の業務と複雑な商習慣が、業務効率低下の大きな要因となる
- 老朽化した既存システム刷新は、ペーパーレス化を含めた全社的なDX推進と経営判断の絶好の機会となる
- 全体を一気に変えず段階的に導入し、現場の習熟を促すことで、システム定着の成功確率を高める
- 現場の実態把握とキーパーソンを巻き込んだ推進体制が、多様なステークホルダーとの協力を生み出す
- DXは単なる業務効率化を超え、経営戦略と顧客体験の向上を同時に実現する変革の機会となる


