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Blog 特集コラム

2024.07.26

電子帳簿保存法における「電子取引」とは? 保存・取引要件を解説


監修:日鉄日立システムソリューションズ株式会社
   DXソリューション事業本部 産業流通ソリューション事業部
   デジタルドキュメントソリューション部
   上級文書情報管理士・文書情報マネージャー 梅原 淳


一般的な「電子取引」と電子帳簿保存法における「電子取引」との違いとは?

電子取引は、インターネットやその他の電子的手段を利用して行われる商品やサービスの売買などを指します。これには、オンラインショッピング、電子メールを通じた契約の締結、EDI(電子データ交換)などが含まれます。日常生活においては、これらの取引は幅広い形態で存在し、個人間取引から企業間取引まで多岐にわたります。

一方、電子帳簿保存法(略称:電帳法)における「電子取引」は、より具体的な定義を持ちます。
この場合での電子取引は、法人税法施行規則などで規定される法律や税務上の記録保持要件を満たすために、取引情報を電子的に保存する必要がある取引を指します。つまり、財務報告や税務申告のために必要とされる取引記録の電子保存が対象となります。
電子帳簿保存法は、企業が取引情報を電子的に保存し、必要に応じて国税職員に提出できるようにすることを義務付けています。これにより、紙ベースの記録に代わる電子データの真実性、可視性が保証されます。

電子取引の具体例

電子取引とは、具体的にどのような場合に当てはまるのでしょうか。
以下のような例が電子取引として挙げられます。

  • 特定の取引に関連してEDIシステムを使用した場合
  • ペーパーレスFAX機能を備えた複合機を使用した場合
  • DVDなどの記録媒体を通じて請求書や領収書のデータを受け取った場合
  • 電子メールでPDFファイルなどの形式で請求書や領収書データを受け取った場合
  • インターネットのウェブサイトから請求書や領収書のデータをダウンロードやアップロード、またはウェブ上に表示されるこれらの文書のスクリーンショットを使用した場合
  • 電子請求書や電子注文書のやり取りにクラウドサービスを利用した場合
  • クレジットカードの使用明細、交通系ICカードの支払いデータ、スマートフォンアプリを通じた決済データなどを扱うウェブサービスを使用した場合
  • 関連会社間で共有するシステム間のデータの共有の場合
  • 企業間の共通フォルダによる情報共有の場合

これらの例には電子メール本文に記載された請求情報も含まれます。

改正後に電子保存が義務化され、電子取引はどう変わった?

これまでの電子帳簿保存法では、所得税(源泉徴収を除く)や法人税に関わる保管義務者が電子取引を行う際、法令の定める要件に従って関連する電子取引の情報を電磁的に保存する必要がありました。この法令は、電子取引情報から作成された紙の文書については例外を認めていました。

DocYou_column_img_014_01出典:国税庁ホームページ (https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/01.htm

しかし、法改正により、この書面保存の条項が削除され、改正後は電子取引情報を電子データとして保存することが全面的に義務付けられるようになりました。
この変更には多くの企業から柔軟な適用を求める声が上がったこともあり、法改正の実施は企業の準備状況に配慮し、2023年12月31日までは従来のように紙での保存も許容される「宥恕措置」が導入されました。
寛恕措置が終了となる2024年以降は改正された電子帳簿保存法に従い、電子データの保存が必要となり、企業はそれに適した保存システムを整備するなどの必要があります。

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出典:国税庁ホームページ 電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~ 電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和6年6月)(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0024005-113_r601.pdf


電子データ保存が義務化される電子取引の対象例

電子データ保存が義務化される電子取引の対象例(Web請求書・メールデータ・EDI取引・クラウド取引)

電子取引の4つの保存要件とは?真実性と可視性の確保が必要

改正前の電子帳簿保存法では、第10条で電子取引のデータ保存について規定しています。
具体的には、所得税(源泉徴収を除く)や法人税に関連する情報の保管義務者が電子取引を実施する際には、財務省令に基づきその取引の情報を電磁的形式で保存することが必要だと定義されています。
ただし、この電磁的記録から生成される紙の文書については、紙での保存が許可されていました。
しかし、法の改正によって、紙での保存、つまり書面保存についての許可が削除され、すべての電子取引に関するデータを電子形式で保存することが義務化されました。

2024年時点で、電子取引の保存要件は、次となります。


○ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件の概要

要件

電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。) (規2②一イ、⑥六、4①)

見読可能装置の備付け等(規2②二、4①) 

検索機能の確保(規⑥五、4①)

次のいずれかの措置を行う(規4①)

一 タイムスタンプが付された後の授受

二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す ※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関 する規程を定めている場合に限る。

三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、 授受及び保存を行う

四 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け

出典:国税庁ホームページ 電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~ 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和6年6月) (https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0024005-113_r603.pdf

これを分かりやすいように4つの項目にまとめました。

項目 保存要件 内容
真実性の確保

以下のいずれかの措置を行うこと(電子取引の授受方法ごとに選択する)

1. タイムスタンプの付与。データの真実性を確保する措置

- 取引情報にタイムスタンプを付与する。
- タイムスタンプが付与された取引情報を受領する、または取引情報の受領後、速やかにタイムスタンプを付与する。
- 訂正や削除を確認できるシステム、もしくは訂正や削除ができないシステムで取引情報の受領および保存を行う。
- 訂正や削除の防止に関する事務処理規定を定め、それに沿った運用を行う。

可視性の確保

2. システムの概要を示した文書の提供

- システムの概要を記載した関連書類を備え付ける(システム概要書・システム基本設計書など)。

3. 見読性の確保。データ閲覧用の装置の準備

- 保存場所に、電子計算機・プログラム・ディスプレイおよびプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付ける。ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付ける。
- 電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにする。

4. 検索機能の充実

- 下記の条件で検索できるようにする:
①「取引年月日」「取引先」「取引金額」の3項目
②「取引年月日」または「取引金額」の範囲指定
③①の2項目以上の記録項目の組み合わせ。
税務職員による質問調査権に基づく電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②と③は不要
※基準期間の売上5千万円以下の場合の検索要件はダウンロードの求めに応ずるのみ

これらの要件は、電子取引データの保存に不可欠であり、検索機能やデータの真実性担保の方法には、改正によってさらなる明確化が図られました。
例えば、検索条件が「日付、金額、取引先」に限定されました。企業はこれらの改正を踏まえ、適切な電子取引の保存対策を講じる必要があります。

電子帳簿保存法改正に向けた、電子取引への対応方法

以下に、電子取引への対応方法を手順に沿って紹介します。

手順1: 法律の理解と準備
まず、電子帳簿保存法の要件を正確に理解し、電子取引の全量を把握することが必要です。これには、保存すべき電子取引の種類、保存期間、必要なデータの形式などが含まれます。次に、企業内でこれらの要件を満たすために必要な体制やシステムの整備を検討・計画します。

手順2: 電子データ保存システムの導入
適切な電子データ保存システムの選定と導入が次のステップです。
システムは、電子取引に関するデータを安全に保存し、必要に応じて迅速にアクセスできるものでなければなりません。クラウドベースのサービスや、社内サーバーに構築するオンプレミス型のシステムなど、ビジネスのニーズに合った選択をします。

手順3: データの真実性と可視性の確保
保存されるデータの真実性と可視性を確保するために、タイムスタンプを利用する、もしくは不正な訂正削除の防止に係る事務処理規程の制定と運用を定めるなど、データの改ざん防止措置が講じられていることが必要となります。また、システムには検索機能を備え、必要な情報を可視化できるようにします。

手順4: 社内浸透・研修と定期的なレビューによる改善
企業の従業員が新しいシステムやプロセスを理解し、適切に運用できるように教育を行います。さらに、定期的なレビューを通じて、法律の変更に対応し、システムが適切に機能していることを確認します。

手順5: バックアップとセキュリティ対策
重要な電子データのバックアップを定期的に行い、災害やシステム障害からの復旧を可能にします。また、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を施します。

手順6: 監査対応
内部監査や第三者による監査を定期的に行い、電子帳簿保存法に対する遵守状況を評価します。問題点が見つかった場合は、改善策を講じてシステムやプロセスを更新します。

電子帳簿保存法への対応は一度きりの取り組みではなく、継続的なプロセスです。技術の進歩や法律の変更に柔軟に対応し、企業のデータ管理体制を常に最新の状態に保つことが重要です。このようにして、企業は電子取引に関する法的要件を満たし、ビジネスの信頼性と効率性を高めることができます。

法対応の電子取引に特化した専用システムは限定的な対応に過ぎない?「Paples(パピレス)」&「DocYou(ドックユー)」のご紹介

JIIMAによる電子取引ソフト法的要件認証製品は200を超えるソフトウェアがありますが、電子取引に特化した専用システムの導入だけでは、その効率性や生産性の向上には限定的な対応となります。電子取引の認証に加えて帳簿、書類、スキャナ保存の認証を横断的に取得したシステムの導入が理想的と考えられますが、そのような認証製品は数製品に限られています。

「Paples」は企業内の書類管理業務を大幅に効率化できる統合電子帳票基盤です。
帳簿データの保管、帳簿関連書類の管理、スキャナ保存した証跡の管理、電子取引データの管理まで横断的にJIIMA認証を受けており、社内の様々な帳簿及び帳簿関連書類について、電子帳簿保存法に則った適切な保管・運用が可能です。社内の書類について、紙での運用から脱却したい、様々なシステムの帳票をもっと自由にした上で、適法性も保ちたい、そういった要望に応える機能を多数備えています。

「DocYou」は、電子契約および電子取引、書類配信を可能にするクラウドベースの企業間取引プラットフォームであり、Webインターフェースを通じて簡潔に契約締結や電子取引のプロセスを完結できる機能を提供しています。

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※本記事は2024/7時点の情報です。

まとめ:電子取引の要件を把握して電子帳簿保存法に対応しよう

国税関係帳簿・書類の電子保存が可能に

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類などの電子保存方法を定める法律です。
電子帳簿保存法施行前は国税関係帳簿・書類の保存は書面と規定されていましたが、コンピューター会計や統合ERPシステム導入の普及に伴い、紙の保存にはスペースの確保やコストがかかるという問題がありました。電子帳簿保存法によって国税関係帳簿・書類の電子データでの保存ができるようになりました。

電子帳簿保存法遵守のポイント

電子帳簿保存法の遵守には、
①法人税法施行規則などで定められた国税関係帳簿・書類の法律の要件を正確に理解し、
②法人税法施行規則などで定められた保存必須項目のシステム作成の状況とシステム間データ連携の粒度を把握すること、
③適切なデータ保存システムの選定・導入、データの真実性と可視性の確保、
④従業員の教育、バックアップとセキュリティ対策、
そして
⑤定期的な監査と改善に至るまで、一連の手順を踏むことが重要です。

電子帳簿保存法対応におすすめの「Paples」、「DocYou」

電子帳簿保存法を適用するまでは課題が多くありますが、一度対応すると、紙の帳簿を作成・保存・管理する手間が省けるため、業務効率化につながります。作成・管理にかかるコストや、保管スペースの節約にも役立ちます。

義務化をきっかけに対応する必要がありますが「Paples」「DocYou」をはじめ使いやすいツールもさまざまなものがあります。今回の改正電子帳簿保存法への対応をきっかけに、経理DXを進め、社内の体制をより強固にしていきましょう。

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