電子契約のニーズが高まっています。新型コロナ禍でテレワークが推奨される中、電子契約システムの導入で押印業務のための出社を回避しようとする企業も増加。さらに、2020年6⽉には内閣府、法務省、経済産業省もテレワーク推進のために契約書への押印不要の⾒解を示しています。しかし、電子契約は本当に法的有効性が担保されるのかなど、不安に思う方も多いと思います。
そこで、今回から3回にわたり、「Q&Aでわかる電子契約・電子取引」として電子契約・電子取引の概要や電子契約システム選びのポイント、将来の展望などについて、PPAP総研代表の大泰司章さんに解説していただきます。1回目は、電子契約の基本的な仕組みやトレンドについてご紹介します。
関連リンク
第2回「電子契約システムの失敗しない選び方」
第3回「電子契約・電子取引の現在と未来」
プロフィール
大泰司 章(おおたいし あきら)さん PPAP総研代表
三菱電機、日本電子計算の営業現場で数百社と商取引をする中で、紙にハンコ、PPAP※1、PHS※2、ネ申エクセル※3といった形式的な電子化などを経験。これらの不合理な商習慣を変えるべく、2012年より一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)にて電子契約やインターネットにおけるトラストの普及に従事。2020年からはデジタル商取引をさらに推進すべくPPAP総研を設立し、ユーザー向けとベンダー向けにコンサルティングを実施。
※1 Passwordつきzip暗号化ファイルを送ります/Passwordを送ります/An号化/Protocol
※2 Printしてから/Hanko押して/Scanして送ってくださいプロトコル
※3 印刷した際の見栄えを優先して作られているため、Excel本来の目的であるデータ整理や表計算ができないほど、複雑にレイアウトされたExcel
電子契約とは何か?どんなメリットがあるのか?
Q1. 電子契約・電子取引とは何か?紙と印鑑を用いた契約や取引とどう違う?
A1. 本質的には同じことです。
出所:PPAP総研作成資料「商取引の全面デジタル化に向けて」(2021年3月)より
大泰司さん 契約や取引の際にやりとりとする情報の形式が、書面からデジタルデータに代わったものが電子契約や電子取引です。
従来は書面にハンコを押していましたが、ハンコの代わりに「秘密鍵」※1を利用します。ハンコが押された書面が「電子署名つきの電子ファイル」に、印鑑証明書等が「電子証明書」にあたります。
※1 暗号化されたデータを復号する際に使われる「プライベートキー」のこと
Q2. 電子契約と電子取引の違いは?
A2. 電子契約は、電子取引のひとつの方法です。
出所:PPAP総研作成資料「商取引の全面デジタル化に向けて」(2021年3月)より
大泰司さん 「電子契約」というと書面に甲乙と書いてハンコを押す契約書の取り交わしを電子化することがイメージされるため、それだけが「電子契約」と思われがちですが、見積書、請求書といった商取引で扱う文書全般の電子化が含まれます。
「電子取引」は、一般的にはFAXやEDIも含むので、「電子契約」より広い概念だといえます。
Q3. 電子契約・電子取引に関わる法律は?
A3-1. 1つは「電子署名法」です。
電子契約・電子取引に関わる主な法律
- 電子署名法: 電子署名の法的効力を認める法律
- 電子帳簿保存法: 電子データの7年間保存を義務づける法律
大泰司さん 「電子署名法」は、適切に行われた電子署名があれば、「電子文書としての法的効力(真正な成立の推定)」を認めることを定めたものです。
なお、「適切」とは、「電子署名を行うために必要な符号及び物件が適正に管理され、本人だけが行うことができる」状態のことです。
民事訴訟法第228条第4項には、「私文書は、本人[中略]の署名又は押印がある時は、真正に成立したものと推定する。」と規定されていますので、書面に押印されていると、裁判官はその契約が真正に成立したと推定します。電子署名法は、その電子版だと言いえるでしょう。
2020年には押印や電子署名法に関するQ&Aが公開されていますので、必要に応じて、社内への説明に使えるかと思います。
押印、電子署名法に関するQ&A
- 押印に関するQ&A(2020年6月19日)
- 電子署名法2条1項に関するQ&A(2020年7月17日)
- 電子署名法3条に関するQ&A(2020年9月4日)
A3-2. もう1つは「電子帳簿保存法」です。納税額に関わるため、留意すべきですが、難しく考えすぎず、適切なシステム導入で解決しましょう。
大泰司さん 「電子帳簿保存法」は、実務上最も気になる法律です。
簡単にいえば、電子取引の帳票やデータをどう保存するかを規定した法律です。適切に保存していない場合は国税庁に納める税金の額に関わってきますので、経理にとっては死活問題となります。「電子データの7年間保存を義務づける」ということですが、他にも検索要件など満たす必要があります。
また、電子帳簿保存法は令和3年度改正が議決され、2022年1月1日以後適用されます。電子取引の一部であるFAXやメールに影響を与えるため、業務的にはインパクトがありそうです。
Q4. 電子契約・電子取引はなぜ普及が進む?政府はどんな政策を打ち出してきたか?
A4 普及の理由は経済合理性。政府の後押しもあり、今後は一般的になるでしょう。
大泰司さん 政府は2000年頃から、契約書をはじめとして、すべての取引における紙文書を電子データ化できるよう電子帳簿保存法(1998年7月)や電子署名法(2001年4月)を施行し、デジタル化を推進してきました。
しかし、紙を前提とした商習慣や社内規定を変更するコストが高く、デジタル化に経済合理性がなかったため普及しませんでした。
特に商習慣や社内規定の変更には大きなパワーが必要で、現場からのボトムアップではなかなか紙からデジタルに切り替えられませんでした。
ところが、最近はコロナ禍による社会的要請と電子契約の認知度向上によって社内外への説得コストが下がり、経済合理性が得られるようになりました。このため、契約や取引業務のデジタル化に弾みがついています。
特に新型コロナウイルス感染症の流行が拡大してからは、デジタル庁を新設するなど国全体のデジタル化を主導するとともに、先ほども触れた「契約における押印の見直し」を公表するなどして民間のデジタル化も支援しています。
現在はトップダウンでテレワークが実施されることも珍しいことではなくなりました。
今や導入しない理由が見つからない
大泰司 契約・取引の電子化を後押しする法改正や、コロナ禍によるテレワークの広がりなどにより、電子契約システムは急速に普及し、しかもその勢いは加速度を増しています。
もはや、それを導入しない理由を探す方が、難しい状況になっているといえるでしょう。
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※本記事は2021/04時点の情報です。
まとめ
- 電子契約・電子取引と紙と印鑑を用いた契約や取引は本質的には同じ
- 電子契約と電子取引はほぼ同じ意味だが、取引の方がより広義
- 電子契約・電子取引に関わる法律は、主として「電子署名法」と「電子帳簿保存法」
- 電子契約・電子取引が普及する理由は経済合理性
政府の後押しもあり、導入はさらに加速